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Last-modified: 2014-02-18 (火) 10:40:36

魔法の派 第6章

妖精コミュニケーション

ニムエ「ですから今日はお掃除です。散らかします。お部屋の隅々までなくします」
アーサー「しょっぱなからスゴイのが来ましたね!?」
ニムエ「まずは右からです。左を掃除します。用具は上なので下へ行きます」
アーサー「こ、言葉が駄目なら身振り手振りで……ちょ、待って! 怯えていますよね!?」
エル「何やってんのかねー?」
アーサー「マーリンの魔法が解除されたせいでニムエと話ができなくなったって事でしたけど、そのままにできないでしょう」
エル「ちょー人間本位だなこの野郎め。妖精全体から見れば人間と話せる方が珍しいのだぞ」
エル「そもそもアレ、人の手で妖精を制御するために戦闘力を削減する機能もあるし。正直肩がこって仕方がないしな」
アーサー「……乳もないのに肩こりキャラとか」
エル「引っこ抜くぞ」
アーサー「どこを!? ナニで!?」
エル「それより例の話なのだぞ」
エル「街のど真ん中にある遺跡……今は見張り台として使っている建造物だがね」
エル「どーやら『断絶の時代』の通信施設だったよーだ。マイクロウェーブって言って分かるかねー?」
アーサー「分かっていたら学者になっていますこの野郎」
エル「具体的に、『断絶の時代』で何と通信していたかは不明」
エル「ただ、マーリンはこれでアーサーやエクスカリバーの成長データを束ねていたんじゃないかね」
アーサー「キモい! しかもアレ、僕んトコだけじゃなくて都市国家群全部に建ってましたよね!?」
エル「なー? ジジィのストーカーとかキモいよなー」
エル「ただマーリンは情報を統合して『王』となる者の条件を算出していたはずなのだぞ」
エル「数値の計算ができたら、『湖』で作った騎士コンスタンティンを再整備するつもりだったのかね」
アーサー「全部マーリンの計画通り」
アーサー「『戴冠作戦』が続行している以上、マーリンは必ず次のアクションを起こすはずです」
アーサー「黙って見過ごせば、キャメロットやブリテンの民まで危険にさらされます。どうにかしてマーリンを止めないと!」

磨かれるは竜の牙

エル「斥候から連絡があったぞ」
グィネヴィア「あのジジィの隠れ家が分かったんですのね」
エル「魔法要塞ゴア」
アーサー「ユリエンス王の拠点? でもあそこは壊れたはずです」
エル「マーリンなら直せるのではないかね? ゴアには都合の良い物もありそーだし」
グィネヴィア「ドラグーンファング……。ユリエンス王が開発していたあれを使うですって!?」
アーサー「未完成だったからこそ、キャメロットの破壊は免れましたけど」
アーサー「アレにまで手を出せるとしたら……」
グィネヴィア「ドラグーンファングの開発状況が不明な以上、至急ゴアへ向かうしかありませんわ」
グィネヴィア「マーリンが調子づく前に、さっさとケリをつけなさい!」

アーサー「防衛用の刀剣鉄橋や水没大橋は復旧していませんね」
アーサー「……な、何で刀剣鉄橋まで?モーガンが暴れ回ったせいでしょうかね」
ガラハッド「ドラグーンファング最優先。マーリンもつまらないものに精を出すわね」
アーサー「っ!? やばっ!!」
ガラハッド「早速潰しに来たわねマーリン勢!」

アーサー「これ、『湖』製の騎士……?」
ガラハッド「『断絶の時代』のテク無駄遣いね。逃走前に製造した分だろうけど、剣や円卓なしじゃ長持ちしないわ」
マーリン「その通り。じゃがドラグーンファングが盤を引っくり返す」
アーサー「マーリン」
アーサー「あれを撃っても無駄です。魔女モーガンも失敗作だって切り捨ててましたし」
マーリン「確かに、これは3キロ先の小屋も狙えないじゃろう」
マーリン「なら、発射以外の方法でキャメロットを攻撃する手段を作れば良い」
マーリン「このように、な」

アーサー「巨大な、翼!? まさか……!」
マーリン「ホワイトワイバーンに、スカーレットワイバーン」
マーリン「ワシはそう呼んでおるが、正式な分類はこうか。戦略爆撃機」
アーサー「……」
マーリン「この2機にドラグーンファングを搭載し、キャメロット上空まで飛ばす。そこから兵器を落とせば完了じゃ」
アーサー「見逃すとでも?」
マーリン「じゃから用意した。時間を稼ぐための騎士達をな」

アーサー「マーリンは、撤退!? くそ、僕だって逃げたいのに!」
ガラハッド「震える暇で2機の爆撃機を止めるわよ!」
アーサー「くそ……」
アーサー「飛ぶなあああああ!」

エル「緊急だぞ!」
エル「2機の爆撃機の内、破壊できたのは1機だけ。ホワイトワイバーンはキャメロットに向かってる!」
エル「対策を練る! 宮殿へ戻るのだぞ!」
アーサー「相手は空飛んでんですよ!? あれより早く戻れですって!?」
ユリエンス(通信)「いえ、方法がない訳でもありません」
ユリエンス(通信)「私の治めていたゴアのすぐ外に、特殊な交通網のターミナルがあります。『断絶の時代』の遺跡を利用したものですが」
ユリエンス(通信)「磁石を使って車体を浮かばせる乗り物で、どうにかして稼動できれば、ホワイトワイバーンより早くキャメロットへ辿り着けるでしょう」

席巻する白き竜

アーサー「な、何ですかあのメチャ早い乗り物は。空爆に間に合ったものの、い、生きた心地がしません」
エル「だがドラグーンファング搭載の戦略爆撃機は着実に接近してきているのだぞ」
エル「放っておけばキャメロットへの投下が実行される。数時間で何とかしなければ」
グィネヴィア「住民の避難なんて無理ですわ! そもそも、マーリンの手勢がどこに潜んでいるか分からない以上、街の外だって危険でしょう!?」
アーサー「ドラグーンファングはユリエンス王が詳しそうです。話を聞きましょう」

ユリエンス「ドラグーンファングは粉末状の固形燃料を利用した戦略兵器です」
ユリエンス「爆発物の燃焼効率は、酸素との接触面積の大きさによって左右されますからね。最大限に活用するためには……ついてこれてます?」
アーサー「妖精といい魔法使いといい……。爆発を止める方法はあるんですか?」
ユリエンス「1度投下されてからでは難しいですねえ」
ユリエンス「ただ、ドラグーンファングの中身がばら撒かれる前に爆破してしまえば、何とかなるかもしれません」
ユリエンス「先ほどもお伝えした通り、爆発物の燃焼効率は空気中の酸素との接触面積に左右されます」
ユリエンス「ドラグーンファングの場合、ギュッと詰まった状態で火を点ければ、それほど大きな爆発にはならないのです」
ガラハッド「でも投下前のドラグーンファングって空の上でしょ」
ガラハッド「1万メートルまで飛ぶ? 『断絶の時代』の技術でもあれば……」
アーサー「いや、できるかも」
グィネヴィア「?」
アーサー「ドラグーンファングです。あれは元々発射型の兵器だったはず。ならホワイトワイバーンに叩き込めば……!」
ガラハッド「照準が狂ってるってのはどうすんのよ?」
ユリエンス「いえ。ゴチャゴチャした地形の中から標的を特定するのが難関だったんです。空の1点を飛ぶ爆撃機なら……」
アーサー「ユリエンス王、お願いします。実際にドラグーンファングを組み立てられるのはあなただけです!」
ユリエンス「ここではゴアと違って、『断絶の時代』純正の遺跡に、妖精3人分の力まで借りられますからね」
ユリエンス「最低限の体裁を整えるだけなら、時間までに間に合わせられそうです」
アーサー「頼みましたよ」
アーサー「それから、マーリンは『湖』製の騎士も作っていました。妨害があるかもしれません」
アーサー「迎撃用ドラグーンファング防衛の布陣が必要です。戦える者は前へ!!」

ガラハッド「ったく、私は『断絶の時代』の調査がしたいんだけどなー」
アーサー「僕は玉座で引き篭もってたいんですけど……あれ?」
ニムエ「……」
アーサー「ちえ、やっぱ丸投げにはできませんか。大丈夫、あれは必ず僕達が撃ち落としますよ!」

傍観者の魔女達

モルゴース「マーリンが開発した戦略爆撃機がキャメロットへ向かっているそうね」
モーガン「……慌てる必要はないわ。ここまで離れていれば爆風が届く事もないし」
エレイン「あら。不機嫌そうではなくて、モーガン」
エレイン「自分の開発したドラグーンファングをマーリンに利用されたのがご不満でして?」
モーガン「……」
モルゴース「キャメロット側はどう対応しようとしているの?」
エレイン「ユリエンス王の知識を使って、向こうもドラグーンファングを用意するようでしてよ」
エレイン「狙いはかなり大雑把になるでしょうけど、あの街にはマイクロウェーブを使ったアンテナ塔があるものね」
エレイン「あれをレーダー代わりに使う頭があれば、迎撃の可能性はあるのではなくて?」
モルゴース「さて、どう評価するべきかしらね」
モルゴース「今回の仲間割れ、上手に機能すればキャメロット軍勢を一気に削ぎ落とせるとも評価できるけど」
モーガン「だからマーリンに協力する? アーサー達が用意している迎撃用ドラグーンファングに横槍を入れる?」
モルゴース「長い目で見れば、それが1番の得に……」
モーガン「冗談」
モーガン「そもそもキャメロットが崩壊したって、計画を主導するマーリンは何も痛まない」
モーガン「そうしている内に、マーリンはまた次の『戴冠作戦』を始めて、大勢の民を苦しめる」
モーガン「先代の王ウーサーが父さんを殺し、母さんを奪い、私達の領を瓦解させたときと同じように」
モルゴース「……」
エレイン「ではモーガン。あなたの意見はいかがでして?」
モーガン「……逆にここはマーリンを叩くチャンスよ」
モーガン「あいつはいつも巨大な政権の陰に隠れて手出しができない。でも今なら違う。マーリンが次の隠れ蓑を見つける前に決着をつけるべきだわ」
モルゴース「では……」
モーガン「本当の元凶を倒す気があるなら、ここでキャメロットを潰させるべきじゃない」
エレイン「それも運任せになるのではなくて?」
エレイン「アーサー達が迎撃用ドラグーンファングを完成させられるとは限らないし、マーリン側から妨害があればそれまででしてよ」
モーガン「本気でチャンスを活かすなら、黙って見ている訳ないでしょ」
モーガン「ちょうど試運転もしてみたかったし、あのホワイトワイバーンは良い実験になりそうじゃない」
モルゴース「あれを使うつもり? でもまだあれは海の底のはず……」
モーガン「引き上げには時間がかかるけど、今でもできる事はある」
モーガン「アヴァロン。こいつであのマーリンに泡を吹かせてやるわ」

憂国の魔法使い

ユリエンス「迎撃用ドラグーンファング、配備完了。遺跡のマイクロウェーブ電波塔との同期も済みました」
エル「ホワイトワイバーン接近中。2方向から所属不明の騎士達も確認したぞ!」
グィネヴィア「予想通りマーリンの多面同時攻撃ですわね!」
エル「迎撃兵器を失えば希望は砕かれるのだぞ」
エル「マーリンから迎撃用ドラグーンファングを守ってくれ!」

ガラハッド「マーリンも黙って『断絶の時代』の研究してりゃ良かったのに。力があり過ぎると歪むのかね」
アーサー「あの度胸は僕にないものですけど、参考にしたいとは思いませんね」
アーサー「……来ました。マーリン勢です!」

マーリン「意外じゃよ。剣1本に一喜一憂していたバーサーカーが、よもや知恵を絞って迎撃兵器を用意するとはな」
アーサー「そっちこそ。魔法使いのくせに野蛮過ぎです」
アーサー「敗北の言い訳もインテリ臭を期待していますよ」
マーリン「この場面で言い訳をするのは小物のする事じゃろう」
マーリン「……そもそも、勝者にそれは不要な機能じゃしな」
エル(通信)「照準に利用中の電波塔が!? 迎撃兵器の発射手順に問題が出たぞ!」
アーサー「……ただの故障じゃなさそうですね」
マーリン「妖精ニムエ。彼女を遠隔命令し、迎撃システムへ介入した」
マーリン「とはいえ、ニムエ自身は裏切りを拒もうとしていたかもしれんがね」
ガラハッド「……」
マーリン「ニムエとは仲良くしてやっていたようではないか。人語がわかる状態ではないはずじゃが。アーサーの名前の優先度は高く設定され……」
アーサー「ふざけんな」
アーサー「たかが魔法使いが。他者の心にまで踏み込んだ罪、ここで清算してもらいます!!」

マーリン「……腐ってもブリテンの王か」
マーリン「じゃが迎撃兵器は起動できぬはず」
マーリン「ホワイトワイバーンから投下される1撃で『第2期戴冠作戦』の危険因子は排除され、『第3期』への道が開ける!」
アーサー「都市国家群がまとめて焼き払われれば、あなたの『第2期』にも影響を及ぼすのでは?」
マーリン「失った分は補充すれば良いだけじゃ。王の候補など腐るほどいるのじゃからな!」
アーサー「ユリエンス王! 迎撃用ドラグーンファングはどうなりました!?」
ユリエンス(通信)「この短時間では!」
ガラハッド「来た。ホワイトワイバーン!?」
アーサー「このままじゃ……!?」
エル(通信)「ちょっと待つのだぞ!」
エル(通信)「ブリテン西方の海中にとんでもないエネルギーが! 何かが発射される!!」

アーサー「落ちた……ホワイトワイバーンが!」
ガラハッド「今の光線は……まさか『断絶の時代』!?」
マーリン「アヴァロン……」
マーリン「魔女どもめ。そんな隠し球を……!!」

エル「ホワイトワイバーンは墜落したのだぞ。マーリンの捕縛も完了」
グィネヴィア「最悪の事態だけは回避できましたわね」
エル「手放しで喜べるかね」
エル「マーリンの言っていたアヴァロン。あれも調べる必要がありそーだぞ」

1つの優しき結末

マーリン「これでワシを幽閉できるとでも思っていたのか」
マーリン「元々、アーサーどものためにこの宮殿を用意したのはこのワシじゃぞ」
マーリン「内部構造や抜け道などは誰よりも知っておる」

マーリン「こんなものか」
マーリン「妖精ニムエ。ここにいるな、出て来い」
ニムエ「返事はハイでノーです。速やかに合流するため離れていきます」
マーリン「む。翻訳を切っておったか。どれ」
ニムエ「命令をどうぞ」
マーリン「まずは話を聞きたい」
マーリン「ブリテン西方の海中に沈むアヴァロンが部分的に起動した。ホワイトワイバーンがやられたのはそのためじゃ」
マーリン「あの時、ニムエには迎撃兵器の運用を妨害するため、マイクロウェーブ電波塔へ介入するように命令していたはず」
ニムエ「ええ。それが?」
マーリン「あの時、電波塔へ介入していたのはお主だけじゃったか?」
ニムエ「いいえ。送信元は不明だったけど、私以外の介入者は確認済み。対処の命令はされていないから放置していたけど」
マーリン「信号のヘッダは? 妖精か、魔女か」
ニムエ「魔女ね」
マーリン「やはりな」
マーリン「あの都市国家群にあった大量の電波塔は、元々『断絶の時代』でアヴァロンに干渉するために用意されたものじゃったか」
マーリン「確かに、あれほどの出力の電波塔集合体は他に類を見ない」
ニムエ「それが?」
マーリン「だとすれば、やはり勝算はある」
マーリン「ニムエ。お主にはあの電波塔へ介入する力がある。それを使ってアヴァロンへ干渉しろ」
マーリン「あれを使えるなら話は早い。邪魔なものを一掃してから次の『戴冠作戦』を行う」
ニムエ「……」
マーリン「ニムエ、ワシはこれから『洞窟』へ潜る。破滅的状況に備えた例のシェルターじゃ」
マーリン「必要な命令は入力する。ワシが潜っている間に電波塔集合体へ干渉し、アヴァロンの矛先をキャメロットへ向けろ」

マーリン「アーサーめ。イレギュラーに救われたようじゃが、そのイレギュラーに喰われて消えるが良い」
マーリン「ん? 何じゃ」
ニムエ(通信)「『洞窟』の施錠を確認。手動開錠の拒絶設定完了」
マーリン「ニムエ?」
ニムエ(通信)「自動施錠期間の入力受付終了。27万9001年の完全密閉で確定」
マーリン「何をしておるのじゃ!? ニムエ!!」
ニムエ(通信)「状況の自己判断を行ったまで」
ニムエ(通信)「魔法使いマーリン。私はあなたの殺害を禁じられているが、それ以外の行動まで封じられている訳ではない」
マーリン「馬鹿な……。妖精はわしの手足じゃ。コマンド入力用のアプリケーションじゃ。それが、そんなものに……」
ニムエ(通信)「ご心配なく。コマンドに反しないよう、あなたの命は適切に『保護』させてもらう。これから27万9001年ほどね」
マーリン「ニ、ムエ。ニムエェェええええええ!!」

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